2022年4月、茨城県つくば市において初となる医薬品専用物流センターが竣工した。
3年にわたるコロナ禍をみるまでもなく、人々の暮らしを根底から支える物流業界にとって、医薬品物流への対応強化は喫緊の課題である。今回は、代表取締役社長である沼尻年正と新センターの共同開発会社である、伊藤忠ロジスティクスの取締役執行役員3PLグループ長、遠藤太郎氏との対談を企画。「つくば医薬品物流センター/つくばメディカルロジスティクスセンター(以下:TMLC)開発に至る経緯と今後の展望について語っていただいた。
PROFILE
遠藤 太郎(伊藤忠ロジスティクス株式会社 取締役 執行役員 3PLグループ長)
1993年伊藤忠商事株式会社入社。入社3年目のハンガリーブタペスト駐在を皮切りに、3度の海外駐在経験。伊藤忠ロジスティクスの米州拠点であるITOCHU LOGISTICS(USA)CORP. CEO&PRESIDENTを経て、2019年帰国。現在に至る。
沼尻 年正(沼尻産業株式会社 代表取締役社長)
1991年株式会社常陽銀行入行、1992年沼尻産業株式会社入社。NUMAJIRI USA,INC. PRESIDENTを経て、2001年沼尻産業株式会社 常務取締役就任。2005年に代表取締役専務就任、2011年4月より現職。
この度は、「つくば医薬品物流センター」の開発にお力添えいただき誠にありがとうございます。
当社は、医薬品物流を重点分野の一つと位置づけております。昨今、有事における物流の重要性が再認識され、とりわけ社会性・公共性が高く、安全・安定供給が必須である医薬品・医療機器の物流においては、安定的であることはもとより、国際的な基準・法令遵守の厳格化など、さまざまな要望やサービス品質向上へのニーズがとても高まっています。
当社としては、今回のつくばエリアにおける当センターの開発をベースとして、国内のみならず、航空輸送との一貫サービスの提供により、医薬品物流サービスの更なる拡充、展開を図っていきたいと考えております。
こちらこそ、このような伊藤忠ロジスティクス様との素晴らしいご縁を頂き、無事竣工を迎えられたことを大変嬉しく思っております。
当社は、ここ茨城県つくば市で1962年に創業し、おかげさまで本年創業60年を迎えました。地域貢献を社是に、物流施設の自社開発を推進しております。今回、伊藤忠ロジスティクス様と共に開発させていただきました新センターは、当社にとって25拠点目となりますが、医薬品専用の物流センターは初となり、新しいノウハウと実績を積む機会をいただいたと感謝しております。
私共、伊藤忠ロジスティクスは、自身を医薬品・自動車関連・食料品・生活消費財の4つを主要重点分野とした、物流ベースの“マルチ機能集団”であると考えております。医薬品については、既に全国9ヶ所、計20,000坪の医薬品専用センターを運営しておりますが、今回の新センターの開設は、そんな当社にとっても、さらにまた大きな一歩を踏み出せたと感じています。
私共は、つくばの変遷とともに成長させていただいた企業として、地域に密着した開発を進めてまいりましたが、約20年前から「物流拠点つくば」を謳い、この地が物流の拠点として最適な立地になることを確信しておりました。
今回の新センターも、常磐自動車道「谷田部IC」から5キロ、4車線化が進む首都圏中央連絡自動車道「つくば牛久IC」からは3キロという立地、成田空港を含めた関東の各拠点へのアクセスの優位性は言うまでもありません。これからの貴社の戦略的拠点としてお役に立てれば幸いです。
ありがとうございます。当社としても、今回のセンターを国内外の医薬品サプライチェーンを見据えた拠点として構想しておりますから、アクセスにおける優位性、利便性は、立地選びの大きなポイントになりました。
さらに今回、良いなと思ったのは、「つくば」が持つ“学園都市”というクリーンなイメージです。商社系物流会社的の視点から見れば、医薬品を専用に扱う物流センターにとって「クリーン」というイメージは、とてもポジティブな付加価値になると考えました。また、加えて近郊には医薬品関連メーカーの工場や研究所が多数進出していることから、潜在的なニーズが汲み取れると期待もしていますし、この地域の持つ多面的な価値に注目しています。
私は、生まれも育ちも茨城で、この地域が大好きですし、とても大切にしていますが、遠藤さんも茨城にご縁があるそうですね。
ええ、これは個人的な話になりますが、私の父の実家が茨城なんです。ですから家族と一緒に幼いころ行き来した思い出の場所です。筑波山には祖母と何度も登っていますし、とても懐かしいエリア。そんな縁も感じて、先日、今回のことを両親に伝えましたら、とても喜んでいました。
うれしいお話です。先ほども申しましたとおり、そんなつくばにとっても、当社にとっても、医薬品専用という初の開発物件となりましたが、今回、新しい機能への理解を深めるための打ち合わせを、何度もさせていただきました。その中で、女性が多く勤務するセンターになるとのお話を聞き、とりわけ事務棟の設計は、“女性が働きやすい環境”へのこだわりを持って取り組ませていただきました。
はい、おっしゃる通り事務棟部分は、荷主様の要望でもある女性目線をたいへんに考慮していただき、本当に細部に至るまで十分に応えていただきました。大変機能的で感動しました。
当社は、これまでも、物流や倉庫に対する男性的なイメージを払拭したいと、女性が気持ちよく働ける施設開発にこだわってまいりましたので、その経験を生かし、トイレの使い勝手や洗面台の数などの機能性はもちろんのこと、視覚的な意匠にもこだわりました。共用部のカフェテリア、リフレッシュスペースなども、ここで働かれる皆さんが本当に寛げる休憩時間を過ごしていただきたいという思いで設計をしています。
倉庫機能としても、医薬品専用ならではの厳格で高度な機能を有しています。室温、定温、保冷、冷凍の4温度帯対応、入出荷バースはドックシェルター完備に、有事対策を施し、災害時にも72時間対応の非常用電源を有した設備となります。もちろん、医薬品物流における厚生労働省のガイドラインに完璧に準拠した施設となります。
当社は事業を進める上で、パートナーシップをとても重視しています。技術的なテーマを具体的に申し上げると、もちろん、まずはお客様のニーズに応えること。そして、GDP※ガイドラインの遵守、BCP※対策、2024年問題※、SDGsおよび脱炭素への取組み。この5点を共有し、取り組んでいけるパートナー様とご一緒することが肝要と考えています。
御社はこの5点についても合致していると感じておりますし、「売り手よし、買い手よし、世間よし」を示す、いわゆる「三方よし」の精神は、現代のSDGsに通じるものとして、当社の経営の根幹に据えていますが、同様にすべてのステークフォルダーを大切にする御社の経営姿勢には敬意と共感を持っています。
ありがとうございます。当社は経営理念のひとつに「物流を軸に、地域課題を解決する。」を掲げています。今回、ぜひにと伊藤忠ロジスティクス様との共同開発に手を挙げさせていただきましたのも、2011年の東日本大震災にはじまり、毎年のように起こる地震や異常気象による甚大な災害、さらに今なお終わらないコロナ禍をくぐり抜けながら、さまざまな有事におけるライフラインの維持、まさに人命に直結する医療と医薬品の供給体制を支える、「医薬品物流の役割」を、ぜひ担いたい、一助となりたい、と考えたからに他なりません。
とても共感します。昨今における分断の進む先の見えない世界情勢など、憂慮すべきさまざまな社会課題に向き合いながら、自社の利益だけでなく、共に解決していこうという意識を持つパートナー様と末長く関係を築いていきたいと考えています。
「つくば医薬品物流センター」が竣工したばかりではございますが、医薬品物流の需要が増していることもあり、すでに2棟目の計画にも着手しております。引き続きお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
やはり、パートナーシップが問われる時代です。そしてこうした事業は、気が合う仲間たちと進めたい。気が合うって大事ですよね。
はい、おっしゃる通りです。そして、そんな私たちの事業活動を通じて、より良い社会につながることが何より大切だと考えます。これからも末長くお付き合いください。本日は誠にありがとうございました。
※【GDP】医薬品の適正流通基準(Good Distribution Practice)の略。医薬品の市場流通における流通経路の管理保証、医薬品の完全性の保持、更に偽造医薬品が正規流通経路へ流入することの防止を図ることを目的としている。
※【BCP】事業継続計画(Business Continuity Plan)の略。企業が、テロや災害やシステム障害、また不祥事といった危機的状況下においても、業務の継続ができるように、あらかじめその方策、戦略を記述した計画書。
※【2024年問題】2024年4月、働き方改革関連法によって「自動車運転の業務」に対し、時間外労働時間の年間960時間の上限規制が適用されることに伴い、発生する諸問題のこと。一般的には、ドライバーの1日の運転時間が短くなることで一人当たりの走行可能距離も短くなるため、2024年は「モノが運べない時代」になるのではといった懸念などがある。
2022年4月現在
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