「『考える力』の鍛え方」という上田正仁東大教授(物理学)の講演を聞く機会がありました。教授の話によると、「優秀さ」には3つの段階があるそうです。一つめは「マニュアル力」で、一通りに答えが決まった問題を与えられた時間内に出来るだけ早く正確に解く力とされ、一般に「学力」と呼ばれる力です。「マニュアル力」の問題は、一通りの答えしかないと考えることに慣れてしまうと、それ以外の視点からの思考が出来なくなり、独創的な「型破り」な発想が出来なくなってしまいがち、ということです。
二つめは「考える力」で、一つの難しい問題をじっくり考えて答えにまで辿り着く力です。マニュアル的な入試問題を解くのが苦手な学生でも大学に入ってから伸びるのは、「考える力」が優れているからだそうです。
所謂「頭の良さ」とは与えられた問題を素早く、正確に解く力のことで、マニュアル的訓練で鍛えられるものであるのに対し、「考える力」は時間が掛かっても考え抜く根気強さや本質を見抜く力である、と対照されています。
三つめは「創造力」で、自ら課題を見つけて、それに対して独自の解決法を編み出す力です。この課題には決まった答えは存在せず、それに対して独自の答えを見出すことの出来る力が「創造力」であるとしています。
「マニュアル力」は「考える力」の基礎であり、「創造力」を発揮するためには「考える力」が必要、ということで、この三つはピラミッド構造を構成し、社会ではこれら三つ全ての力とその「総合力」が重要、ということです。
これらの力は課題を解く為に使われるものですが、その対象となる「テーマ」の選択が大事であると上田教授は言います。その際、留意すべきは、自分の実力で簡単に出来ることにしないこと、絶対に出来ない(と自分で思う)ことにもしないことが重要であり、ぎりぎりまで頑張れば出来ると直感するテーマを選択することで、自分の可能性を最大まで伸ばすことが出来ます。
答えのない所に独自の答えを見出したいと思う意志、困難な問題に挑戦する勇気が創造力の源泉になります。
このことは会社の仕事にも通じることが多く、特にテーマや目標を決めて、それを達成する為に粘り強く、やり抜くことが極めて重要であり、テーマ設定も含めて「本質」を見極める意識と力が求められることを再認識しました。
目標に向かって努力を持続させるには、その課題が自分個人の為、というよりもより大きな存在(社会やより多くの人の為になること)とつながっていることを意識することが有効であると考えています。
”重要なことは、正しい答えを見つけることではない。正しい問いを探すことである。” (ピーター・ドラッカー)