「リーダーシップ」の重要性は今に始まったことではなく、書店に行けば、リーダーシップについて書かれた書物は山と積まれていますが、単純な「解」が一つあるという類のものではありません。個人としても組織としても悩みながらその解を追求し、実践しようと努力するものであり、世の中に数多ある言葉の中から、自分が共感できる言葉を選び、自ら実践してみようとする「お手本」を探すことの積み重ねだと考えています。
今から十数年前、当時の三井物産の槍田(うつだ)会長が、野中郁次郎先生との対談の中で語った内容もその一つです。
リーダーとは人をenergizeする(エネルギーを与える)、inspireする(鼓舞する)ことの出来る人だと思う。社員には最高に充実感のある会社人生を過ごしてもらいたいと思うので、その為には良い上司に巡り合い、良い指導を受けて、悔いのない良い会社生活を送ったと思ってもらいたい。三井物産の様な業種では、数年後は何が起こるか分からないという変化の激しい時代、会社はこれからこう行くべきと言い得る業種ではなく、そのようなリーダーは求め得ない。これだけ広いフロント(ビジネスの最前線)を持って、色々な人が様々な仕事をしながら刻々と変化していく中、頑張っている人をenergizeする、元気づける、頑張れる元気を与えてくれる、そんなリーダー像が一番良いのではないか。会社のヒエラルキー(階層構造)が持っている弱点の1つは、部長(上司)が部員(部下)よりも優秀だと思っている点。部下とか、自分より若い人から何かを学ぶという意識が欠けている。下からも学ぶという姿勢が会社の中に行き渡って来ると随分変わって来るのではないか。
会社で仕事をする上で大切なことは色々ありますが、仕事が面白いか面白くないか、ということはとても大事なことです。自分の仕事に喜びややり甲斐を感じられるかどうかで、大きな成果が上げられるかどうか、会社生活、ひいてはその人の人生が充実したものになるかどうか、が分かれて来ます。
人間が生きていく元気の素となるのは、「愛される」「誉められる」「必要とされる」「役に立つ」という要素だと言われます。これを仕事に当てはめてみると、自分の仕事が世の中の誰かに必要とされ、役に立っている、ということが実感でき、そしてその仕事ぶりを周囲からきちんと評価され、誉められ、お客様や仲間から一人の人間として信頼され、愛されるかどうか、ということになります。
上司も部下もお互いに相手を鼓舞し、エネルギーを与え、組織が元気になり、お互いを信頼し合う組織をつくるリーダーが育つ会社にしたいと考えています。
「あなたの行動によって周りがもっと夢を見て、もっと学び、もっと行動し、
もっと良い自分になりたいと、駆り立てられるなら、あなたはリーダーだ」
“If your actions inspire others to dream more, learn more, do more,
and become more, you are a leader.”
(ジョン・クインシー・アダムス:第6代アメリカ合衆国大統領)