Friday Massage IsaoUeda

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Friday Message

2025年9月12日

「後藤田五訓」

我々の仕事では、予期せぬこと、起こって欲しくないこと、発生すると都合が悪いことなどが否応なく起こります。そしてマネジメントに上がって来る報告には、「良い報せ」よりも、「悪い報せ」の方が目立ちます。マネジメントの仕事では、「good news」よりも、「bad news」への対応がより重要であり、我々はその取扱いに正面から向き合い、精通する必要があります。

「カミソリ」と呼ばれた後藤田正晴氏は官僚としては警察庁長官、政界に転じては1980年代に中曽根内閣の官房長官としてその名を残しています。その強みは、官僚を知り尽くし、かつ、それを超えた判断が下せることにあり、後藤田氏の哲学を最も端的に示したものが「後藤田五訓」です。

  一 省益を忘れ、国益を想え

  二 悪い、本当の事実を報告せよ

  三 勇気を以って意見具申せよ

  四 自分の仕事でないという勿れ

  五 決定が下ったら従い、命令は実行せよ

この中でも特に効果があったのが二であると当時の部下が述べています。ミスが許されない、減点主義の官僚の世界では、一般に悪い報告を聞いた上司は部下を怒りがちなところ、後藤田氏は悪い報告に対して決して怒らなかったそうです。

英語にも“Don’t shoot the messenger”(メッセンジャーを撃ってはいけない)という表現があります。単なる報告者を責めてはいけない、殺す(怒る)と情報が二度と上がって来なくなる、ということを戒めたものです。このような物騒な言葉がある程ですから、下から悪い情報を上げるのは相応の覚悟や勇気が必要であり、それを受け止める上司の姿勢が大事ということです。

ネガティブな反応をせず、じっくり話を聞いて、テーブルの同じ側に座っている様な一体感・安心感を醸しつつ、問題にどう対応するか打ち手を考える姿勢に加えて、上司の「質問力」「聞き上手」な姿勢も大事です。説明し難いことも聞き出すような「振り」も有効ですし、直接的な聞き方のみならず、部下自身も気付いていない問題の核心を炙り出すような質問を繰り出すことも、危機管理の要諦です。

組織の規範として“bad news first”を掲げている会社もあります。「自分の為ではなく、会社の為」に速く正確に報告すべき、ということです。自分のことを考えてしまうと、言い訳や解決策が見出せる状態になるまで黙っていたいという気持ちになりがちです。これが「会社の為」と考えると、出来るだけ早く上司や周囲を巻き込んで、皆で知恵を出した方が最善の解決策に行き着くという考え方になり、如何に問題を解決するかという方向にベクトルを合わすことが出来ます。

情報の伝達スピードや正確性には「摩擦係数」とでもいうべきものがあります。いざという時に機動的に正しく情報が行き交うように、敷居を低くし、風通しを良くし、「摩擦係数」を小さくするように、日頃から信頼関係を積み上げることもマネジメントの重要な役割です。

- Friday Message

『Friday Message』について

このweekly messageは、前職で2006年4月に海外赴任した際、スタッフメンバーが米州各地に散らばっていたことから、「一つのチーム」としての意識を醸成するために始め、勤務地や仕事の内容が変わっても、変わることなく今日まで続けてきたものです。

テーマの多くは仕事全般に関することで、誰もが考えたり、疑問を持ったり、悩んだりするものを採り上げていますので、自分で何かを考え、自分なりの答えを出す時に、何らかの気づきやヒントになればと思います。

植田勲プロフィール

1983年4月
三井物産入社。ハーバードビジネススクールPMD修了。
米国三井物産副社長(物流DOO)、アジア太平洋州本部CAO、IT推進部長、ロジスティクス統括などを歴任。2020年三井物産流通ホールディングス(現三井物産流通グループ)社長。
2024年4月
沼尻産業に入社。常務取締役 事業統括本部長に就任。
2025年4月
専務取締役 事業統括本部長に就任。

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