「目的」と「目標」は似ていますが、少し異なります。「目的が最終的な到達点であるのに対して、目標は目的を達成するための手段や指標」と説明されることがあります。例えば、健康を維持する、という目的に対して、一日一万歩歩くことを目標にする、というようなことです。或いは、「全社員の物心両面の幸福を追求すると同時に、物流の革新を通して社会の発展に貢献する」という経営理念(目的)に対して、今期の期首計画を達成する、という目標があるように、最終的な目的を達成するために、時間やフェーズで区切ったものが目標という関係です。
以下はピーター・ドラッカーの著書で紹介されている「三人の石切職人」のエピソードです。
旅人が、ある村を訪れました。村では、三人の石切職人が、作業をしています。何やら、大きな建物を建築しているようです。旅人は尋ねました。
「あなた方は、何をしているのですか?」
一人目の男は答えました。
「お金を稼ぐために石を切ってるんだ」
二人目の男は答えました。
「ここで一番の石切職人になる技術を身につけるんだ」
三人目の男は空を見上げ、目を輝かせながらこう答えました。
「教会を作っているんだ。私が作った教会で多くの人が集まり、安らぎの場となるんだ」
この話は、仕事にどのような意味づけをするかによってモチベーションや仕事の生産性も大きく変わる、ということを分かり易く説いたものです。換言すれば、その仕事の目的は何か、ということをしっかりと肚
落ちするところまで深く考えるか、考えないかによって、やり方や結果が変わり得るということです。
我々は会議をする際に、その目的が何か、ということをしっかりと確認せずに始めることがありますが、そのような会議は目的に向かうという参加者の意識が一本化されず、迷走して時間を無駄にする可能性が高くなります。最初に目的を定義して、その目的に至る道筋をイメージしながら、進めた方が道に迷うことなく、効率的に議論を進めることができます。また、何かの壁にぶち当たった時、元々の目的に立ち返ると、その壁を乗り越えるべきなのか、或いは回り道をすべきなのか、の正しい判断がし易くなります。
我々の仕事においても、何か迷いが生じたら、そもそもの目的は何だったのか、そのために優先させるべきことは何なのか、ということを再確認することで、「自分なりの答え」を見つけることができるものと考えています。
「目的を見つけよ。手段は後からついてくる。」(マハトマ・ガンジー)
「組織の目的とは、普通の人間が普通でないことをできるようにすることだ」(ピーター・ドラッカー)