「京セラ」を創業し、KDDIの前身である「第二電電」を立上げ、経営破綻した日本航空の立て直しに尽力した稲盛和夫さんは、人材育成にも力を注ぎ、若手経営者の勉強会である「盛和塾」を立上げると共に、数々の著作も遺しています。
その稲盛さんの考え方の代表的なものが「人生の方程式」、即ち、
「人生・仕事の結果=考え方 X 熱意 X 能力」
というものです。
この内、「能力」と「熱意」は0から100点までのスコアで表され、その掛け算なので、能力があって努力を怠る人よりも、普通の能力でも熱意を持って努力する人の方が、素晴らしい結果を残すことがある、と説いています。
これに「考え方」を掛けますが、考え方とは「生きる姿勢」であり、マイナス100点からプラス100点までのスコアで表します。如何に能力が高く、熱意があっても、間違った考え方を持っていると、マイナスに大きな点数がつくことになりますので、人間としての正しい考え方を持つことがとても大事になる、ということです。
今から30年前に起こった「地下鉄サリン事件」は、オウム真理教の信者の中に、科学者としてとても有能な人材がいて、猛毒のサリンを開発することに成功した結果、発生したものでした。しかし、その能力と熱意がテロ行為に使われてしまうと、世の中に対してとんでもないマイナスの影響を与えてしまう、ということを考えると、「正しい考え方」を持つことの重要性と、「マイナスの考え方」の危険度がわかります。
稲盛さんは、プラスの考え方とは「良い心」であると述べています。「良い心」とは、常に前向きで、建設的であること。みんなと一緒に仕事をしようと考える協調性を持っていること。明るいこと。肯定的であること。善意に満ちていること。思いやりがあって、優しいこと。真面目で、正直で、謙虚で、努力家であること。利己的ではなく、強欲ではないこと。「足る」を知っていること。感謝の心を持っていること、などです。
逆に「悪い心」とは、後ろ向き、否定的、非協調的。暗く、悪意に満ちて、意地が悪く、他人を陥れようとする。不真面目で、うそつきで、傲慢で、怠け者。利己的、強欲、不平不満ばかり言う。人を恨み、人を妬むこと、などです。
どのような考え方をするか、というのは個人の自由ですが、その選択によって自分の人生、運命が決まってしまうということを理解している人は少なく、これほど重大なことなのに学校でも会社でも教えてくれない、と稲盛さんは言います。
稲盛さんが師事していた、中村天風先生は「人生は心ひとつの置き所」という言葉を遺しました。つまり、心の持ちようで人生は良くも悪くも変わる、ということです。
中村天風先生と稲盛和夫さんに共通している考え方は、「建設的に、ポジティブに、前向きに、明るい人生を考えなさい。暗い思いを持ってはなりません」というものです。それには、「宇宙霊」(宗教的にいえば「神様」と言い換えられます)は、明るく前向きな人が好きだから、というシンプルな説明がなされています。
これまでの経験から、それは信じるに足る、納得感のある説明であると考えています。
稲盛和夫さんの言葉:
「思いは必ず実現する。それは、人が「どうしてもこうありたい」と強く願えば、その思いが必ずその人の行動となって現れ、実現する方向に自ずから向かうからです。」
「常に明るさを失わず努力する人には、神はちゃんと未来を準備してくれます。」