Friday Massage IsaoUeda

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Friday Message

2025年7月25日

リスペクト

人間関係の大事な潤滑油の一つが「リスペクト」です。

人間には誰でも人から認められたいという欲求があります。心理学者のアブラハム・マズローが示した「欲求階層の5段階説」によると、ピラミッド型の下から上に、「生理的欲求」(生きて行く為に必要な食欲や睡眠欲など)、「安全欲求」(安全に生活したいという欲求)、「愛情欲求」(集団に属し、仲間から愛情を得たいという欲求)、「尊敬欲求」(他者から独立した個人として認められ、尊敬されたいという欲求)があると説明しています。

ここまでの4つは足りないものを満たすという「欠乏欲求」ですが、最後の5つめは「自己実現欲求」と言われ、自分の持っている能力を最大限に活かして、創造的活動や自己の成長によって、「あるべき自分になりたい」という欲求で、そこまでの4段階とは異質なものです。
一般的に、高いレベルで「自己実現」を達成することは容易ではないため、4つめの「認知欲求」とも「自我欲求」とも言われる「尊敬欲求」は最上位に位置する欠乏欲求と言えます。

相手をリスペクトすること、相手のことを慮(おもんぱか)ること、は勝ち負けが明確に分かれるスポーツにおいて顕著に見られます。勝負には勝つこともあれば負けることもあり、今日の勝者が明日もそうだとは限らない、という共通認識がある為、敗者や弱い立場の人に対してリスペクトを示すことがスポーツの様々な場面に埋め込まれています。
勝負に勝った時や、順調な時には、心に隙が生まれ易いもので、そうした時こそ、謙虚に周囲に対する配慮を忘れないことが大切です。弱い立場の人や悩んでいる人を含めて、相手の気持ちに配慮し、謙虚さを忘れなければ、相手に共感し、相手の気持ちを理解することができます。

相手の気持ちを理解できれば、例えば交渉に際して、相手の立場を知り、相手の出方を決める背後関係や利害関係に思いを致し、交渉をうまく進めることにつながります。交渉をうまく進めるとは、単に自分の利益になる、という打算的な意味ではなく、お互いの為に最善と思われる妥結点に早く、円滑に、円満に到達するということです。
相手の立場を知るには、まず相手をリスペクトすることから始めることです。それにより、相手が大事にしていること・優先事項は何か、相手の最も嫌なことやリスクは何か、ということに対する理解が深まります。どんな意見や考えにも100%理不尽なものはありません。その意見の背後には何らかの原因や背景があり、そういう考えを持つに至っているのだという気持ちを持って相手を知る努力を続ければ、必ず見えて来るものがあります。

人間は皆、4つめの欲求を持っています。そしてそれはかなり強い欲求であり、生存や安全がほぼ満たされている今日において、極めて「人間らしい欲求」です。周囲から認められたいという自らの欲求を満たすには、まず相手の「尊敬欲求」を満たすことから始めることであり、リスペクトは様々な人間関係の摩擦を和らげる潤滑油と考えられる理由がここにあります。

- Friday Message

『Friday Message』について

このweekly messageは、前職で2006年4月に海外赴任した際、スタッフメンバーが米州各地に散らばっていたことから、「一つのチーム」としての意識を醸成するために始め、勤務地や仕事の内容が変わっても、変わることなく今日まで続けてきたものです。

テーマの多くは仕事全般に関することで、誰もが考えたり、疑問を持ったり、悩んだりするものを採り上げていますので、自分で何かを考え、自分なりの答えを出す時に、何らかの気づきやヒントになればと思います。

植田勲プロフィール

1983年4月
三井物産入社。ハーバードビジネススクールPMD修了。
米国三井物産副社長(物流DOO)、アジア太平洋州本部CAO、IT推進部長、ロジスティクス統括などを歴任。2020年三井物産流通ホールディングス(現三井物産流通グループ)社長。
2024年4月
沼尻産業に入社。常務取締役 事業統括本部長に就任。
2025年4月
専務取締役 事業統括本部長に就任。

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