時間は我々にとって身近なものであり、とても貴重なものですが、眼に見えない、人間の五感で捉えることの出来ないものであることから、それを意識し、大切に扱うには、イマジネーションが必要となります。
例えば、何かの締切までに課題を完了するには、締切に向けてどのように時間配分すれば良いかを考える。半年、1年かかるような長期の仕事であれば、途中にマイルストーン(区切り)を設けて、もう少し短い時間の単位で目標やタスクを切り分ける。中期経営計画であれば3~5年後にどのような世界になっているかを想像してみる。3~5年後にこうなっていたいという姿を想像して、そこからバックキャスト(未来から現在に向かって考え、目標やビジョンを実現するための計画を立てる)して足元で何をしなければならないかを考える。技術の進化によって「将来的に出来るようになること」と「ビジネスで使えるようなコスト」にまで下がるタイミングを見極めるなど、やりたいことの具体的なイメージと時間を結びつけて考えることが有効です。
人間の認知能力には限界がある、ということを感じる典型的なものの一つが「時間」に関することです。
メンタルコーチのアンソニー・ロビンズは“Most people overestimate what they can accomplish in a year – and underestimate what they can achieve in a decade”(多くの人は1年で出来ることを過大評価し、10年で出来ることを過小評価する)と言っています。ビル・ゲイツも「我々は、今後2年で起こる変化を過大評価し、今後10年で起こる変化を過小評価してしまう。無為に過ごしてはいけない」と述べています。
これらはいずれも「時間」について語られた数々の言葉の中でも「名言」といえます。
変化の速さと時間の関係も人間の五感で捉え難いものの一つです。20年前には存在していなかったスマホは、今では我々の生活の一部となり、なくてはならない存在ですが、2000年代の後半に出始めた頃に今日の姿を予測出来た人はほとんどいません。同様に、20世紀には一般的ではなかったeコマースも、この30年で水か空気のような、当たり前の存在になりましたが、最初の頃の1年、2年で考えるとその影響の大きさ、世の中への拡がり方を予測することは容易ではありませんでした。
過去を振り返ってみて、10年、20年で我々の生活が大きく変わったことは、誰でも認識できますが、未来を正確に予測する力は人間には備わっていません。
変化の速さや大きさを鑑みると、過去10年で起こったことと同様の変化が、向こう5年で起こり得ると考えておいた方が良さそうです。そしてその変化を「正確に」予測することは不可能であるという前提に立ち、その変化の兆しを見逃さないという心構えと、どのように変化しても対応出来るような柔軟性を持ち、対応する為の基本的な組織能力を磨き続けることが大切だと考えています。